このヒッティンの丘について、ヨハナンはかなり詳しい解説をしてくれたが、S師の通訳が断片的なので概要しか判らない。ヒッティンの丘やアルベール山は聖書には登場しないが、マカベア戦争(B.C. 2世紀)、ヘロデ大王(B.C.1世紀)、対ローマ戦争(1世紀)時代ここは難攻不落の要塞となり、シリア(ギリシャ)もヘロデ大王も、ローマもここを陥とすのに大変苦戦を強いられたという。
この絶壁には天然の洞窟がいくつもあって、敵がひとたびここに篭城してしまうと、なかなかその攻路は難しかったのである。ヘロデ大王に反抗する者たちが篭城した時も攻路は難航を極め、最後はこの頂上から兵士を吊り下ろし、洞窟内の者を一人一人槍で刺し殺していったのだという。
敗北を悟った人々は、この洞窟から投身して全滅したそうだ。ヨハナンの話が終わると、私たちは車に戻って次の場所に行くのかと思ったのだが、何と、この絶壁を降りて行くのだという。絶壁に鎖やロープを張ってあり、何とか下って行けるようにしてある。
下る途中は、もうガリラヤ湖など眺める余裕はないが、その絶壁を下る途中に大きな洞窟があり、そこに入ることも出来る。私もそこに入り、2千年前にここに篭城し投身していった人々に思いを寄せることが出来た。又、この絶壁に野生のチューリップが赤い花を咲かせている。チューリップはパレスチナが原産地で、今も原種のまま咲いている。