エルサレムへの旅(28)

 聖墳墓教会はキリストが十字架に架けられたカルヴァリの丘と遺体が収められた墳墓跡とされる場所に建てられた会堂である。この会堂内にカルヴァリの丘とキリストの墓とされる場所があるのだ。会堂内部はローマカトリック、ギリシャ正教、アルメニア正教、エチオピアのコプト正教などの区分に分離され管理されている。私たちはそのコプト正教会の入口から入場したのだ。コプト教会の礼拝堂は古めかしく、それほど広くはなく薄暗い。

 続いて他の区域に入って行ったが、会堂内は相当に広く、多くの見学者が行き来している。ゴルゴダの丘と言われる所も長い行列ができていて、私たちは並ばずに会堂から出た。ガイドの説明がなければ、どこが何かよく判らない。私たちが出た所は正面玄関のようで広い幅の前庭があり、その先は広い石段になっている。聖墳墓教会の地面は現在の町の地面より 10m 低いということが、この石段を見ることで納得できる。

 この会堂内は当時のカルヴァリの丘や園の墓の雰囲気を想起させてくれるものは皆無のように思った。むしろ先に訪れたゴードンのカルヴァリと園の墓の方が当時を偲ばせる雰囲気を残していた。主イエスキリストの十字架と復活は福音の核心である。しかし、この教会堂で見たものは、その抜け殻に思えた。この場所で静かに黙想するには相当の努力を要するであろう。