創世記37章で17歳のヨセフは父ヤコブの使いとして、家畜の遊牧をしている兄たちの無事を見届けるためにヘブロン(エルサレムの南 25km)からシケム(エルサレムの北 55km)へと旅立った事が記緑されている。ところが兄たちはシケムよりも北 25kmのドタンまで移動していた。
その道のりは100km を越える旅となった。ところがヨセフはこのドタンで兄たちによってエジプトに向かっている隊商に売り飛ばされてしまうのだ。その前に穴に投げ落とされた事が書かれている。この穴がこの地方に多く散在する貯水用の穴であると考えられている。乾期にはこの水は使い尽くされ空井戸となる。ヨセフがこの旅をしたのは乾期の終り頃(9~10月)か。南部には牧草がなく、ヤコブの家畜は北部の牧草を求めて移動した事からも、この事が推測できる。この貯水用の穴がドタンだけでなくイスラエル各地にあり、キブツ・マアニットにも残されているのだが、これはすでに書いた。
私は再度この穴を観察した。そしてこの穴の周囲を枯れ草を踏み分けながら歩き回って見る事にしたのだ。そこには死海近くのクムランの遺跡を見たのと同じ様な浴槽型の水槽らしきものがあった。幅3.5m、長さ7mの石造りで2つに分割されていて石段で中に降りられるようになっている。
ユダヤ人の儀式用清めのミクベと呼ばれるものかも知れない。更にその近くに墓穴らしきものが三箇所、直径30cm に丸く刳り貫いた石、住居跡らしきものが多く、土の中から顔を覗かせている。