エルサレム独り旅(13)

 聖書には「アブサロムは生前、王の谷に自分のための石柱を立てていた。跡継ぎの息子がなく、名が絶えると思ったからで、この石柱に自分の名を付けていた。今日もアプサロムの碑と呼ばれている。」(サムエル下 18:18)と書かれている。

 現在あるこの碑は紀元一世紀頃のものと推定されているとのことで、再建されたものであろうか。それでもその前に立つと圧倒される迫力を感じ、古い時代に引き戻されたような錯覚に陥る。周囲には私の他は誰れも居らず自分は今ダビデ時代の王の谷に立っているのだという不思議な感動を覚えた。

 ふと気が着くと、周囲は夕闇に包まれ始めていたので急いでここから立ち去らねばならない状況になっていた。そこで急いで左側の急な斜面を両手をついてよじ登り、ずり落ちそうになりながらも何とか旧市街の城壁添いの道路にたどり着くことができた。

 そこから城壁に添ってヤッフォ門に向かって歩いて行ったが夕闇が迫ると城壁がカラフルにライトアップされ幻想的な雰囲気になった。ヤッフォ門に近づくに従って若いカップルとすれ違うようになり、彼らはこの幻想的な光景を楽しんでいるようである。一気に現在に戻され、そこからホテル(安宿)までの道は車の激しい往来と店舗の光の中、まさに現代のエルサレムそのものであった。