ツアーの人々との団体生活(45)

 「ペトロはしばらくの間、ヤッファで革なめし職人のシモンという人の家に滞在した」(使徒 9:43)。これは紀元30年代頃のことだが、今、私たちが居る建物はその当時のものではない。この2千年の間、この町は幾多の戦争で何度となく破壊の憂き目に遭ってきたので、昔の建物跡は地中に眠っている。

 現在「革なめしシモンの家」と言われている建物と、その場所も考古学的な確証はない。古くからの伝承で今の場所であったと伝えられているのであるが、その信憑性はともかく、その当時を思い起こさせるには充分なものがある。

 動物の死体を扱うため当時は汚れた職と考えられていた革なめしは海辺で行われていたらしい。この家も海辺にある。このシモンも主の弟子となっていたのであろう。ペトロはこの家の客人となっていたのである。そして或る日彼はその屋上で不思議な幻を見た。

 その時の光景は、現在の場所でも想像できる。屋上から見える地中海は2千年前とたいした変化はないであろう。そのペトロのもとにカイザリヤからの来訪者があった(使徒 10:17,18)。

 カイザリヤからヤッファ迄の距離は50km余り。翌朝彼はカイザリヤへと旅立つ。今なら車で1時間だが、ペトロたちは丸一日歩いたのである(使徒 10:23, 24)。