エルサレムへの旅(27)

 ヴィア・ドロローサは主イエスの時代は現在の道より約10mも地中に埋まっている。ローマ帝国がエルサレム市内の建物を徹底的に破壊してしまい、その瓦礫の上に今の建物が構築されているからである。

 キリスト時代の町を発掘し再現しようとすれば、現在の建造物を全て除去し、土を10m堀り起こさなければならず、その様な事は現実的に不可能である。1967年の第三次中東戦争でエルサレムの旧市街(城壁内)をイスラエルがヨルダンから奮還した際、旧ユダヤ人居住区からイスラム教徒を排除したのだが、建物全部を取り壊して 10m 下まで発掘することはしなかった。ほんの一部分だけ掘り起こし、主イエス時代の地面を調査しただけである。

 私達は第七ステーションを過ぎた所で右折し、細い路地のような所に入り、石段を上がりながら左折したり右折したりして鉄壁の小さな門をくぐって中庭のような所に出た。その庭は花らしきものも植えられておらず、殺風景で塵っぽい感じがした。ただ、壁近くに大きなからし種の木らしきものが枝を広げて垂れ下がっている。淡いセピア色の空間だ。その庭の右手の小さな入口から建物の中に入って行った。そこはコプト・オーソドックス教会の領域で聖墳墓教会堂の一部であった。