独りヴォランティア(17)

 キブツでの余暇はヘレナから借りているラジカセでクラシック音楽を聴くことが楽しみの一つになっていた。(残念ながらカセットレコーダーの方は壊れていて録音も再生もできない代物である)「イスラエルのラジオ放送局についての知識が殆どないので確かなことは言えないが FM放送では多くのチャンネルがあり、旧約聖書の朗読を流している局、ヘプライ民謡ばかり放送している局、クラシック音楽の局など多くの電波が発信されているようだ。

 食堂には毎朝英字新聞の朝刊が1部机の上に置かれていて自由に読めるのだがヴォランティアの誰かが自室に持ち帰るためか、時々しか読めない。その新聞のラジオ棚を見て、今日はどんな曲を放送するかを知ることができるのである。LPレコードで音楽を流す番組が多いのだが、時々ライプ(実況)放送もある。

 レコード盤で放送する際は実に大雑把で日本のNHK のような放送に慣れている私には驚かされることが多かった。盤には大きな傷があり長い時間プツプツと大きな雑音が続いたり、溝がつぶれていて同じ所が何度も繰り返してしまうということが度々あるのである。それでも放送局の担当者はしばらく気付かないのか数分間も同じ箇所を繰り返しているのである。リスナーから苦情が届かないのだろうか。

 一昨晩はバッハのマタイ受難曲、昨晩はクリスマス・オラトリオのライブが放送されていた。イースターのシーズンなので受難曲は理解できるが、この時期にクリスマス・オラトリオとは珍しい。ユダヤ教徒の多いイスラエルでヒットラーの国のドイツ語でキリストの福音が大々的に放送されるのも不思議に思ったが、その放送から大きな慰めと励ましを頂いた。