キブツへの道(4)

 その青年作曲家H兄は、私との面談で何度も創作意欲が湧いてこないことを訴えなさるので、キリストの福音について話してから、「福音」はギリシャ語で「エヴァンゲリオン」と言うことを私は彼に伝えた。

 それによって彼は新たなインスピレーションを受けたようで、今まで作曲した小品などをまとめ、「エヴァンゲリオン」という作品(組曲)として発表した。それはすぐに女子パウロ会によって彼のピアノ自演でCD化され発売された。

 それ以後、彼は夙川教会の礼拝に出席するようになり、奏楽もして下さった。クリスマスなどの特別集会には、彼のピアノ特別演奏をしたり、彼の音楽教室の先生が来て、ヴァイオリン、チェロ、フルートなどの演奏もして伝道を助けて下さった。

 彼は或る時、「日本中を伝道して回りましょう。吉川さんがメッセージを語り、私がピアノを弾きます」とまでヴィジョンを語って下さった。私の四人の子供たちもピアノを習わせてもらうことになったが、私たちが生駒に来てからは交わりがほとんどなくなってしまった。

 彼は今も作曲家、演奏家として活躍中で、「エヴァンゲリオン」の後「雅歌」のCDを出版し、現在は宮沢賢治の詩への作曲を続けておられる。