キブツへの道(6)

 ちょうどこの頃、一人の青年が夙川教会を訪ねて来た。日曜日の礼拝が終わって教会員が帰った直後であったが会堂内に案内し、昼食を勧めると、素直に応じてくれたので、食事をしながら会話をした。

 彼の住んでいる所は同じ西宮市内であったが、教会からは遠く、とても歩いて来れる距離とは思えないが歩いて来たという。しかも何となく教会に行ってみたかったのだそうで、家内は無気味がり、私に小声で「帰ってもらったら?」と言う。

 彼の住居から夙川教会までの間にはいくつもの他の教会があるのにわざわざわかりにくい場所にある私たちの所に訪ねてくるのは不可解と思ったらしい。夙川教会には金銭を求めて来る人がしばしば訪ねて来て困っていた時期でもあった。しかし、彼はその後、忠実に礼拝を守り、後にあすか野教会で受洗するまで主に導かれることになる。

 彼が或る時、教会に一冊のファイルを持参し私に見せてくれたのである。その中の一つは『つのぶえ』誌で、中川健一牧師が発行しているユダヤ人宣教の情報紙、もう一つはイスラエル旅行に関するかなり詳しいセミナーの文書であった。