キブツへの道(18)

 この飛行機も私の座席は通路側で窓から眼下を見ることができなかった。外は暗間であるが、灯火は見えるし、イスラエルに近付く頃は、空が白みかけていて海岸線などを見ることが出来る。これも残念であった。

 機内のテレビは米国の映画「ビヴァリーヒルビルズ」を上映していた。私が高校生の頃「じゃじゃ馬億万長者」という30分番組があったが、同じ原作で最近映画化されたもののようだ。とても面白いストーリーで好きな番組であったので、懐かし思いを抱きながら画面に見入っていた(英語版であったので言葉は理解できなかったが)。

 飛行機はアルプス山脈を超えるためか、かなり揺れた。ストンと落ちるように揺れたり、機体がミシミシ音を立てたりして乗り心地はすこぶる悪い。何度もヒヤッとさせられ、真夜中を過ぎても緊張のために眠ることができなかった。

 飛行機がイスラエルに着陸した時、多くの場合、機内から拍手が湧き起こり、時には、イスラエル国歌「ハ・ティクバ」(希望)が歌われるということをS師は語っておられた。

 離散地から父祖の地、神の約束の地に帰り着いた感動がそのようにさせるのだ。私たちの飛行機がベングリオン空港に着陸した時は、拍手が湧き起こっただけであった。1994年2月27日(日)午前5時40分のことである。