独りヴォランティア(18)

 J・Sバッハの作曲したクリスマス・オラトリオは全6部から成り立っている。その第2部の冒頭に管弦楽だけで演奏されるシンフォニアという曲がある。これはパストラル・シンフォニーとも呼ばれ、聖夜にベツレヘムで羊飼達が羊を牧している情景を描いた曲とされている。同様の曲はヘンデルのオラトリオ「メサイア」の第一部やイタリヤの作曲家コレルリ、トリルリなどのクリスマス協奏曲でも数多く作曲されている。ラジオでライブ演奏のこの曲を聴いていると、先にベツレヘムに行った時の光景を思い起こし、聖書の記述の事などが心に迫って来た。

 ベツレヘムはエルサレムの南、ユダの荒野の丘陵地帯にある。今はアラプ人の町であるが丘と谷の合間にわずかばかりの平地があるが、町は丘の上にある。主の生誕教会も坂道をずっと登った上にあって、タクシーを下車してから教会堂まで、その上り坂の道を歩いて行った。こんな坂道をヨセフとマリアが歩いて行ったのかと思うと胸が熱くなる。

 現在の道はガタガタ道ではあるが、一応は舗装されている。2千年前はどんな悪路、どんな坂道であっただろうか、臨月のマリアにとっては死を覚悟しなければならない旅であったであろう。ここで産気づいたのも納得できる。クリスマスの夜の羊飼いたちのことを思う時、どこかロマンティックな光景を思い起こしていたが現実はとても厳しい場所であることが、ここに来て見て分かった次第である。

 羊飼いたちが天使のみ告げを聞いて「布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子」を探し当てるために、夜中急な坂道を捜し回わらなければならなかった。あざみやいばらが生い茂った大小の石ころだらけの坂道を捜し回って彼らは主イエスを見出したという事を(ルカ 2:12-16)。