ライオン門で出会った青年と門の内側で腰を下ろして30分ほど語り合う。日本語で話すのは3ヶ月ぶりである。彼はヴィアドロローサを見たかったのでそこで別れ、私はベテスダの池を捜すことにした。
ライオン門のすぐ近くにあるはずなのだが、なかなか入口が見つからない。そこでここだと思う建物の裏側に行ってみることにした。右側の道に入ると両側が店舗が並ぶ狭く薄暗い露地で、アラブ人たちでごったがえしていた。
日本人(東洋人)が珍しいのか、私がへブライ語の文字が書かれた帽子をかぶっているためか、怪訝な顔で私を見る人が何人かいたが、全く気にかけないで歩いた。すぐに右に折れる道があったので、そこへ入ってゆくと左側は三階建ての住宅が並び、右側は大きな鉄製の壁である。
少し歩いてゆくと「カキーン」という鋭い金属音がして私の顔の横を何かが通った気配がし、続いて三度同じ音がした。周囲を見渡すと前方の三階の家の屋上から子供が私に向けて思い切り投石しているではないか!それも一人だけではない。
咄嗟に私は大声で「警察を呼ぶぞ!」と繰り返し叫んでいると、一人の婦人がその家の玄関から飛び出して私の元に駆け寄り「赦してくれ」と繰り返して頼んだ。私はすぐそこから立ち去った。