エルサレムへの旅(24)

 繁盛しているのか、どの土産店も清潔で立派な店構えである。しかし子供達の投石騒ぎの為か、店内にもこの通りにも客らしき人の姿は全くなかった。生誕教会の裏側まで歩を進めてゆくと前方がパノラマのように開け、聖書に書かれているベツレヘムの野と思われる光景が目に飛び込んでくる。口では表現できないような感動を覚えた。

 正面下方にはベイトサフール村の家々が不規則に立ち並び、アラブ人の町には珍しく木々の緑が多くある。クリスチャン家庭が多いからであろうか、教会堂の十字架が所々に見える。教会堂の周囲にも木々が茂っている。土地はなだらかな傾斜面で、遠くには小麦畑のような白っぽい平面の場所が見える。

 私はすぐにルツ記にあるボアズの畑を想起した。ルツが麦の落ち穂拾いをした畑である。少年ダビデもきっとあの辺りを駆け回って遊んだのであろうと思うと胸に込み上げてくるものを感じた。左手の方は少し傾斜がきつく高くなっており木々が更に多く、家屋はほとんど見えない。キリスト生誕の夜、羊飾いたちが野宿をしていたのもあの辺りであろうか。是非ともあの辺りに行ってみたいという強い衝動が私の心を走った。もちろん今日は無理であるが。心ゆくまでこの光景を眺めていたいと思ったが、他の人々が待っているので急がなければならない。