独りヴォランティア(14)

 サマータイムで昨朝より一時間早く起こされて送迎車に飛び乗ってバナナ畑に向かった。しかし昨夜来の雨の影響で雲が低く薄暗くて周囲がよく見渡せない。バナナ樹の枯葉除去の作業だが、濡れた葉がとても冷たく手が悴んでしまう。これでは仕事にならないので作業を始めて10分もしないうちにヨハナンは私達を部屋に戻し、朝食後8時半から作業を再開するという。ところが、また雨が降り始めたので結局午前中の作業は午後に回し(この日は金曜日なので、本来は午後の仕事は休む)、車で野鳥観察に連れて行ってくれた。

 行き先はキブツの北方約 20kmの地中海沿岸の国立公園に指定されているナハショリムという所である。地図で見ると、ここは旧約聖書時代のドル(ヨシュア12:23、17:11他)のすぐ近くで、すぐ南に現在のドルの町がある。「囲み」という意味でソロモン王時代の重要な地点であったらしい(Ⅰ列王 4:11)。

 下車すると、そこにローマ時代の岩を掘った大きな墓穴が3つあり、それぞれの墓には3体を安置できる奥行きの深い立派なものである。入口の横幅は約1m、高さは1.3m程なので屈まなければ中には入れない。直ぐ近くには、昨夜からの雨で勢いよく流れる川があり、そこで釣りをする人、投げ網を打つアラブ系の人達がたくさんいた。

 私たちは先ずバードウォッチングコースを歩いて行ったが、道が水溜りだらけで足が滑って転びそうになり、鳥を観察するどころではなく足元ばかり見て歩かねばならない。それでもカメラを撮りに来ている人が数人ばかり居た。流れに浴って河口まで行き地中海を暫く眺めていた。近くにはヘロデ大王が築いた水道橋やその他の建物跡が数多く残され、雨さらしのためかなり風化している。