ヨアブ氏は50歳前後で体格も私より小さく弱々しく見えた。彼は自分の身の上話を私に語り始めた。彼は生まれてすぐに彼の父が木から落下してしまった。その時はたいした怪我も無く見えたのだが、その後自転車で転倒し、体が正常に動かなくなってしまう。
病院で検査を受けると胸に血腫があることが判明し、すぐに手術となったが9日後に亡くなった。彼の生後2週間の時であった。そのショックで彼の母までが、彼の生後 15週目に夫の後を追うように亡くなってしまった。
彼の長兄はこのキブツの工場で元気に働いているのだが、彼自身は体は健康体だが精神を病んでいるのだという。しかし今は絨毯職人として働けるようになったので病状が少し良くなってきているのだそうだ。
私は英語がダメなので彼に何一つ語ってあげることが出来ず、ただ頷くだけであった。英語で福音を語ることが出来れば、どんなに素晴らしいことかと、この時ほど思ったことはない。
彼はこのキブツでの私の庭師としての仕事がとても良いので以前から感心していて、今日声をかけたのだという。「あなたはプロだ、ずっとここで庭の仕事を続けて欲しい」と言ってくれたので「ありがとう」と言ってから、しかしあと三日でヴォランティアの仕事を終えることを伝えて別れた。