ユダヤ教シナゴーグ(会堂)の安息日礼拝中に配られたキャンディを手にしながら、これを食べてもいいものなのかと考えながら席に着いていた。しばらくすると、二人の男の子が壇の前に出て来て講壇に向かって立つと、ラビが彼らに何かを語りかけた。
その後、男の子たちは一人ずつ壇上に立ち、聖書の巻物の一部を読み始めた。それが終わり、ラビが祝福の祈りらしきことばで祈ると、男の子たちは壇から下りて会衆の前に立った。すると会衆はいっせいに大声をはりあげながらその子たちにキャンディを投げ始めた。
そこで私たちも先ほど受け取ったキャンディをその男の子たちに向かって投げたのである。それらのキャンディは会衆の中にいた幼い子供たちが競い合って捨い集めている。「ああ、このためのキャンディだったのか、食べなくてよかった」と私は心の内で安堵した。もし一ケでも口にしていたら、とんだ恥をかくところであった。
この日の安息日礼拝の中でバル・ミツバ(ユダヤ教の13才になった男の子の成人式)の儀式が行われたのであった。会衆が大声をはりあげてキャンデーを投げつけたのは「おめでとう」と叫んでいたのであろう。礼拝が終わると私たちは来賓として迎えられ二階に通された。