ツアーの人々との団体生活(50)

 カルメル修道会のマリヤ教会礼拝堂内は薄暗く、洞窟奥はよく見えなかった。入ってゆくことも出来るのだが、私は入らなかった。

 会堂を出た私たちは、道路向かいの展望台からの景色を楽しんだ。下方はハイファ港と町並みを、前方は地中海と水平線を、右前方はアッコやレバノンのティルス (ツロ)に到る美しい海岸線を見渡すことが出来る。

 夕刻であったので逆光のためか空はやや霞んでいた。眼下の港には、陸上に古い船が一艘展示されている。映画「栄光への脱出」でも知られているヨーロッパから脱出したユダヤ人が第二次世界大戦直後にイスラエルに帰還した際の船のように見受けられた。

 私は地中海の風景を見ながら、聖書の一旬を思い出した。それは預言者エリヤがバアルの預言者たちとの戦いに勝った直後の場所である。「エリヤはカルメルの頂上に上って行った。エリヤは地にうずくまり顔を膝の間にうずめた。『上って来て、海の方をよく見なさい』と彼は従者に言った。・・・七度目に従者は言った。『御覧下さい。手の平ほどの小さい雲が海のかなたから上って来ます」(列王記上 18:42~44)。

 今、私が立っているこの場所がまさにその地ではないか、と思うと足が震えるのを覚えた。