キブツへの道(20)

 イスラエルの地に初めて立って空を仰いだ時、「あゝ、この地をかってアプラハムも歩いたのだ」という思いが心に差し込み、又、日本に残してきた家族や教会への思いが交差し、急に胸が熱くなり、思わず目から涙がこぼれ落ちていった。

 このベングリオン空港の名はイスラエル初代首相、ダビデ・ベングリオンに因んでつけられた名前であるが、少し以前まではロッド空港と呼ばれていた。日本赤軍が空港ロビーで銃を乱射し、多数の死傷者を出し、床が血で染ったあの凄惨な事件が起った時には、”ロッド空港”と日本でも報道されていた。

 それはロッドという町のすぐ近くにこの空港があるからである。国道一号線を挟んでその北側に空港、南側にロッドの町がある。ここはイスラエルのほぼ中央にあり、シャロン平野の南端、シェフェラー(ユダヤの低地、ペリシテ人の地)の北端に位置している。

 新約聖書では”ルダ”と呼ばれ、ペトロはこの町を訪ね、8年間も床についていたアイネアを癒したことを伝えている(使徒 9:32~35)。現在の人口は4万人で、2万人以上の人々が航空機産業に従事している。

 後に、考えてみると、聖書にはアブラハムがこの空港近くを歩いた記事はなくペトロやパウロが何度か行き来した地であることに気付いた・・・。

 けれどもこの時の涙は生涯忘れることはないであろう。この私が何千年にも及ぶ神の救いの働きが成されたこの地に今立ち、しかも、その測り知れない神の救いの中に入れて頂いて居るという感動の故に湧いて出た涙なのだから。

 現在この空港はテルアビブ国際空港と呼ばれることが多い。