独りヴォランティア(8)

 夕刻になったので、昨日に声をかけて下さったへレナの家に出向いた。ヘレナ宅で何かあるのか、と思ったがそうではなくヘレナ一家と共に中央食堂に向かった。過越の夕食はキブツの全住民と全ヴォランティアが食堂で一堂に会して過越の祭りの食事をするのであった。ヘレナは私を自分たちの家族のゲストとしてヘレナの家族のテープルでこの祭りを祝えるように取り計らってくれたのである。

 ヴォランティアの中で私一人だけがユダヤ人達と一緒の席に座り、他のヴォランティアたちは、いつもは料理を並べてある一画に集められて座っていた。私は最も窓辺の壁際のテーブルであったが、他のヴォランティアたちはその反対側の一番奥まった所に居て、遠くて暗かったので彼らの顔とその表情はよく見えなかった。

 全てのテーブルの上には紙製の白いテープル掛けを敷いてあり、その上に種なしパン(マッツァ)、ワイン、コーラ、スプライト、ピクルス、野菜の漬物(濃い紫色でみじん切りのもの)が置かれている。そして各々の前には 3 種の紙製の皿、プラスチック製のフォーク、スプーン、ナイフ、コップ大小とナプキンが置かれてあった。

 時間(7時)が来るとヨハナンの奥さんマリアン(彼女はこのキブツ内で聖書<旧約>学習会を主催していると聞く)が司式をしてセデル(過越の食事)が進められてゆく。手元に配られたプログラム用紙の式順に従ってハガダー(過越祭用式次第)が読まれてゆく。6時にラジオでもハガダーを放送していた。