この「ユダの荒野」ツアーは参加者に当日の行き先や、タイムテーブルなど一切告げられていないので、どこを見るのか、いつまでそこに居るのか、行って見るまで分からないのだ。エンゲディ国立公園での滞在時間は約一時間半、ガイドはつかず完全自由行動である。公園ゲイトを潜って死海を背にして西の方向に歩いて行く。左側は金網のフェンスがあり、その向こう側に木が所々に生えていて、長い角が後ろに反り返ったガゼルが数頭私の方を見つめている。
それを横目に見ながら緩やかな登りの道を大きな石と丈の高い草を避けながら歩いてゆく。ここは雨期には水が流れて死海に注ぐワジ(水無川)だ。直ぐ下には水分が含まれているので草が繁っているのだ。
更に歩いて行くと右側が岩壁になり、その上部に所々洞窟のような穴が開いているのが見える。そしてこの辺りから足元に水の流れが見られる。今は乾期なのでこの流れは途中で土中に浸み込んで死海にまでは届かない。
かってダビデが主君サウル王の手を逃れてこの場所に身を隠したことがサムエル記上に記されている(24章)。ここは古くからオアシスとして知られていて、古くから栄えた町があり、その遺蹟も発掘されている。
今はキブツエンゲディがあるだけである。真青な空の下、後方を振り返ると彼方に青い死海が見える。更に歩いて行くと目の前に大きな滝が出現する。「ダビデの滝」と呼ばれているもので30分ほどの道のりだった。