キブツ到着(11)

 私とS師に用意された宿泊所はキブツの東端に10棟ほど設置されているキャラバンと呼ばれている建物の北端の棟であった。一棟で2戸、私たちは、その右側で、左側は南アフリカからの青年ヴォランティア男女二人の部屋である。

 この建物は高さ1mほどの細いL字鉄骨を4隅と中央に立てた上に、プレハブのような組立式の箱の形の建物をのせて固定しただけのものである。電線と上下水道管とボルトを外せばどこへでも移設できる簡易住居で、室内を歩くだけで建物全体が揺れ動く難儀な代物である。

 鉄製の階段を上って建物に入ると、そこが狭い居間で右側に炊事用の流し、その横にシャワーとトイレがある。電気のみでガスはない。入口のドアの鍵と冷蔵庫は壊れていて使えない。しかし古くはない。奥の方のもう一つの部屋が寝室でパイプベッドが両側に置かれ、その間のわずかな空間に荷物を下ろした。

 窓からはシャロンの野や丘が見渡せ、野の草花を心ゆくまで眺めることが出来る。しかし今はそれらをゆっくり眺めている時間的余裕はなかった。