最後の2週間(52)

 巡礼者たちが最後の讃美を終えて退場した後も私たちは暫く会堂に残って見学し、主イエスがここで安息日に礼拝を捧げられたことに思いを馳せた。それから会堂を出ると、会堂守りの青年が私たちが出て来るのを(扉を閉めるため)待っていた。

 そして私たちが外に出て行くと怪訝な面持ちで見送っていた。私たちはそこから更に路地を上って行き途中の果物店でぶどうとマンゴーを買い突き当たりまで行った。

 そこからアーケードがなく急に明るくなる。すぐ向かいに衣料品店があったので中に入り、妻が長女への土産にドレスを一着買って外に出ると、アラブ人の老人数人が座っていて私たちに声を掛けてきた。

 「マリヤの泉を見たかい?」「ノー」と答えると「案内してあげるよ」と言う。「ノーサンキュー」と言うと「お金は要らないよ」と言う。私たちは固辞しつつそこを離れてバス停に向った。

 「マリヤの泉」は主の母マリヤがいつも水を汲みに来た泉のことで偽典のヤコブ原福音書に書かれている。ナザレの高台にあり、現在その泉の上にギリシャ正教会の聖ガブリエル教会堂がある。ヤコブ原福音書には、この泉にマリヤが水を汲みに行ったときに天使ガブリエルの御告げを受けたと記されている。

 もし、そうなら少し下にある受胎告知教会と重なり合ってしまう事になる。実際は時間があったのでマリヤの泉も見たかったのだがアラブ人には嫌な思いをさせられる事が何度もあり、金銭を求められる事もあったので用心した。バス停に戻るとバスの到着まで 30分あったのでタクシーでキブツまで戻ることにした。