最後の2週間(40)

 カルメルのケーブル駅の展望台で暫く地中海を眺めていると、結婚式衣装を身に着けた若いカップルが駅から出てきた。地中海を背景にして記念写真を撮るようだ。

 私たちはハイファのバスステーションに向うため崖の小径を降りてゆくことにした。一度、ツアーの人々と来ているので不安はない。地中海を眼前に見ながら岩場を下って行くと、丁度中程の所に岩を繰り抜いた水溜めの井戸の口が開いている。

 直径30cm程であろうか、その穴の中へ雨水が流れ込むように岩に浅い溝が穴の周囲上方に刻まれている。勿論この井戸は現在は利用されている様子は無いが昔の人々にとっては大変貴重なものであったに違いない。

 エリヤやエリシャたちも乾期にはこの井戸水を利用していたのであろうか。こんな急斜面の岩場に巨大な水溜槽を繰り抜く作業に携った人々が居たのだ。水の必要の為とはいえ、古代人の努力の凄さに驚かされると共に、旧約聖書時代の生活現場の一端に触れる体験をさせて頂いた。

 更に下って行くと、緑の木々の中へ入って行く。そこにはエリヤの洞窟がある。アバブ王を逃れて預言者エリヤが身を隠していた場所の一つと信じられており、現在は祈祷所として全ての宗教の人々に開放されている。妻が中に入って行き見学して来た。