最後の2週間(30)

 車が南東へ進むに従い、道は大きく左右にカープし、その下り坂は急峻になり恐ろしい程である。その途中、道が太く膨らんでいる所でヨハナンは車を止め、私たちを下車させて、この荒野の谷の壮絶な風景を見せてくれた。

 柵も何も無いその向うは底知れぬ巨大な谷であり、その向うは高さが数百メートルもある巨大な岩盤の絶壁である。下を見ようとすると、体が吸い込まれそうな恐怖感に襲われる。この大自然の迫力の前に圧倒されて言葉も出ない。

 イスラエルを訪れることがあればエリコとエルサレムの間にあるワジ・ケルトの峡谷とこのアラッドから死海に下るこの大峡谷を見て頂きたい!。エリコからエルサレムへの道は主イエスと弟子たちも歩いた所であり、このアラッドから死海への道は旧約時代にイスラエル兵がエドム人との闘いの度に歩いたであろう道なのだ(歴代下25:11,14)。

 この大峡谷は地図ではメツァド・ツォハルという地名になっている。そこから私たちは死海沿岸まで下ってから進路を北に取り 90号線を死海西岸沿いに 35km先のエンゲディ海水浴場に着いた。死海南部では湖水の中に塩の結晶があちこちに見えたが、エンゲディには見られなかった。

 エンゲディの西側は高台になっていて、このユダの荒野をサウル王に追われたダビデが部下たちと共に放浪した所である(サムエル上24:1,2)。私たちはここで水着に着替えて「死海浮遊」体験をすることが出来た。

 ここからはキブツへの帰路を只管走り続けるのである。エンゲディからエリコを通過し、ヨルダン川に添って北上しベテシャンまで。ここはサウル王最期の地である(サムエル上 31:10-12)。