最後の2週間(36)

 カイザリヤの円形劇場の地下部分は劇場の舞台裏であり出場者(人や獣)の控え室と通路から成っている。控室は鉄柵で囲まれている。

 その後私たちは広い舞台の上に立って歌ったり、観客席の最上階まで上って、舞台で大声を出して歌っている人の声を聞いたり、周囲の風景を眺めたりしていた。

 正面の西方向は青々とした地中海が水平線の彼方まで左右に広がっている。所々には白い波飛沫が立っている。北側はハイファ港からアッコに至る海岸線が弧を描いて左側へと湾曲している。

 海岸のハイファの町のすぐ右手には、急斜面でそり立つカルメル山の北西端があり、その山並みは円形劇場の真東から南東方向まで伸びる山脈となっている。

 山の手前からカイザリヤまでは、バナナやグレープフルーツ畑の緑に覆われていて、所々に住宅地が見える。南側にはハデラの町の象徴となっている巨大な三本の煙突が地中海岸にせり出すように立っている。空と海の青、山と畑の緑は絶景である。

 円形劇場を後にして私たちは海岸の波打ち際を北に向って歩いて行った。砂浜には大きな巻貝の貝殻が所々に転がっている。岸の右側は現在発掘中で布が張られていて隠されている。(私たちの帰国後に、この辺りからヘロデ王の宮殿、彼の死後にはローマ総督の官邸となったものや、劇場や闘技場跡などが新たに発掘された。)